48 夏の朝

朝早くに坂道を歩く
ことりちゃんが、朝ごはんをごちそうしてくれるっていうんだ
まだ7時前で、坂道はセミの声であふれている。あんまり大きな声だから、ヤマモモの林が揺れているみたい

今朝は5時に目が覚めた
いつもは起きるのが7時すぎだから、2時間早い
30分ぐらい片づけしたりそうじをして、20分体操、それでもまだ6時前だった
開けた窓から朝の空気が部屋に流れてくる。深呼吸して夏の朝をおなかに入れる
バックに麦茶の水筒とタオル、ことりちゃんにすもものお土産を3つ持つ

途中、コップさんが庭の朝顔に水やりしているのに会った
雨水を集めたポリタンクからじょうろに入れて、たっぷり水をまいている
今朝は早いんだなあってコップさんがいう。早起きしたんだね
朝顔きれいですね
今年もすばらしいよ、この花の色がさ、いいんだよね
コップさんは、地面にも葉っぱにも、花にも水をあげる
ヘブンリーブルーっていうんだ、こんな水色好きなんだ
じょうろはゆっくり動いて、水がきらきらしながら落ちていった
種ができたら少しわけてくださいっていったら、コップさんはすごくにっこりして、オッケーっていった

坂道を登りきるとことりちゃんちだ
そして、ごちそうの朝ごはんはゆでたてのとうもろこし!
庭の小さなテーブルのカゴに盛られたとうもろこしは、ぴかぴかして金色をしている
夏の朝は、空も空気も、じょうろの水も朝ごはんもみんなきらきら光っている
花壇の草とりをしたワッフルさんとことりちゃんと3人で、おいしい朝ごはんいただきます

46 ジューススタンド、その後

7月になったら、暑い晴れの日が続くようになった
今年はジューススタンドは、夏至のあと1週間続いてそのあと閉店、スタンドうしろの赤青白のビーチパラソルはたたまれて、しーちゃんちの倉庫にもどった

チームソーイングは、ひとまずコップさんの家に移動だ
ミシン1台、人員1人(コップさん)で、しばらくは注文をこなす

工房のイメージカラーはみどりに決まった
コップさんの家は、夏になると全体がみどりになる。日よけ対策で、家のまわり中の草が勢いよく背を伸ばすんだ
東側玄関横には朝顔、強い日差しの西側には元気なゴーヤ、南には立派なヘチマ棚が組まれて影をつくる
北側はローズマリーとアロエが植えられて、もう随分大きくなっている

仕事を始めるにあたり、コップさんは裁縫用の大きな机をジョッキさんに手伝ってもらって作った
ジョッキさんが机の裏に、美しく 丁寧に って書き込んだ
仕事の基本ですねってコップさんがいった

トマトちゃんは焼き菓子屋さんにもどって、お菓子を焼いたりゼリーを作ったり、シャーベットを凍らせている
新商品のマスタードラスクを試食させてもらったら、すごくおいしかった。がりがりがりがりいい音がして、甘くなくて、暑い季節には特によさそうだ

棒パンは気に入って、毎日これを食べて暮らしたいっていいだすほどだ
ツリーハウスできたら、このラスクを持って泊まることにしようっていっていた
カンパンさんも、トマトちゃん、これおいしいよって音をたてている
ビールで乾杯して、このマスタードラスク…
カンパンさんは目をつぶって味を確かめて、すばらしいなあってうなずいた
トマトちゃんは嬉しそうにみんなの話をきいている

45 風船

そして、ぼくにスペシャルなことがあった

もりちゃん(しーちゃんちの3番目のお姉ちゃん)が、家から小太鼓を持ってきてくれたんだ
もりちゃんは、小学生のとき学校の鼓笛隊に入っていた。そのとき使っていた太鼓をくれるっていうんだ
ベルトもあったから持ってきたわ
白いベルトには銀いろの金具がついている
こうやってつけるでしょう
もりちゃんが手伝ってくれる
それで、ここに太鼓をかけると、ほら、たたきながら歩ける
ぼくは、演奏だけじゃなくて、行進にも参加できるんだ
棒パンが、すごいな、小太鼓の聖者だねっていった

演奏は、コーヒーゼリーさんのドラムで始まった
トマトちゃんのトランペットの音が、広場の空にぬけていく
トマトちゃんの吹くトランペットは、トマトちゃんと同じくらい元気のいい音だ。明るくてきらきらしている
しーちゃんとまきちゃんはクラリネットの楽しい音を重ねる。2人の音がスキップしたり、とんだりはねたりして遊んでいる
ベーグルさんのサックスはかっこいい。トマトちゃんのトランペットの音をきいてそれにあわせているんだけど、それがベーグルさんっぽい音なんだ
もんちゃん先生は、腕にみずいろの風船をつけたままトロンボーンを吹いている。先生がなかでも一番嬉しそうだ

コーヒーゼリーさんが、始まる前に、音を感じて太鼓をたたいてごらんっていった
音と楽器と、曲の流れとか空気とか雰囲気を、体全部で感じるんだよ。耳できいていたら間に合わないから、いっぺんに全開にしてね
ぼくはだから、みんなの演奏する音をきいて目をつぶる。深呼吸して、コーヒーゼリーさんから譲り受けたバチを握った
いっぺんに全開にするのってどんな感じだろうと思ったけれど、やめた
たぶん、思っていたりしたら、ほんとに間に合わないんだ。入ってしまおう、この場所のこの時間の全体に入ろう。思うんじゃなくて入っちゃおう

ゆきちゃんとお友だちはバトンをまわして踊った
ガードの人たちはフラッグを高く投げた
ことりちゃんは、広場のオリーブの木にとまったりぼくの肩にとまって歌った
カンパンさんとジョッキさんは、ステップを踏んで行進した
にゃん一郎くんとこまりちゃんは、広場にならんで座って、足で地面をならした
コップさんは、スズメさんの子どもたちと演奏のまねをしながら歩いた(トランペットが一番人気)
棒パンとワッフルさんは、残っていた風船を放った
赤や白やきいろの風船は空に高くあがって、風にのって海のほうにとんでいった  

37 ビワの種

ジャムクラブのとなりには、まりくちゃんがカゴにビワを盛って座る
まりくちゃんはコップさんのガールフレンドで、みかん山に住んでいる
みかん山には、みかんの木はもちろんたくさんあって、ぽんかんやゆずやレモンの木もあるんだって。今は大きなビワの木に、ビワがなっている

このかご、自分で編んで作ったの、ちょっといびつだけどまあまあかなって教えてくれた
カゴは丁度10コならんでいた
これはコップくんからもらったバック。けっこう便利
まりくちゃんは赤が好きなんだ

まりくちゃんは、その赤い肩かけバックから折りたたんだ帽子をだしてかぶった
いいお天気になってよかったねっていって、おひとつどうぞってビワをくれた。皮をむいて口に入れると、少しだけ甘くておいしくて、びっくりした
まりくちゃんは笑って、思ったよりいい味でしょうっていう
茶色の大きな種が左手に3つ集まった

おまつりがおわったらビワの種を埋めてみよう
ひとつはうちのベランダ用で、もうひとつは棒パンちの庭に埋めよう
3つめは鉢に入れて、芽がでたらコップさんにあげよう 

35 おまつりのはじまり

雨がようやくあがって青い空が見え始めると、急に暑くなった

今日は、スズメさんの子どもたちがリボンやスカーフをつけておしゃれしている。コップさんからのプレゼントなんだ
小さなおまつり宣伝隊員さんたちは
このふわふわのリボン、すてきー
もしかして、ゆきちゃんの髪かざりとおそろい?
何色えらんでもいいの? 迷っちゃうな
みてみてー
わたしもみてー
コップさんから大喜びで受け取る

おまつりの日はいい天気になった

ジューススタンドのパイナップルのフラッグが元気よく揺れている
トマトちゃんはむだのない動作で準備する
コップさんは氷や備品のチェックをしながらおもしろいことをいって、トマトちゃんを笑わせている

コーヒーゼリーさんの占いテーブルは朝から大人気だ。、急きょ、相談時間はひとり10分までになった
それでも順番待ちで行列ができるから、棒パンとぼくでイスを運んできて座ってもらった

となりで、ことちゃんは家の倉庫から持ってきたビニールシートを広げた。似顔絵描きじゃなくて、大きな紙を置いて、きた人に絵を描いてもらうことにしたんだ
絵の具やペン、チョーク、色鉛筆、クレヨン、いろいろ用意していいて、どれを使ってもいい。絵は大きく描いても小さく描いても、絵じゃなくて字でも線でもいい
自分の好きな事か、好きなものを描くといいですってことちゃんがいう
好きな人の事を思って描いても、きっとすてきな絵になります

空の下で絵を描くのっていいなあってにゃん一郎くんがいう
それから鼻をくんくんさせてあたりをにおった
何のにおいだろう? いいにおいがするよ。イチゴのジャムみたいだけどちょっとちがうな、なにかな
みどり色のサインペンを握ったまま、にゃん一郎くんはもう一度においをかいだ
わかった、かき氷のイチゴシロップだ。今日はかき氷屋さんもあるんだね
にゃん一郎くんは、持っていたペンのキャップをはずして、きゅっきゅっって音をたてて描きだした
カナブンみたいな、みどり色の虫を大きく描いている

近くでこまりちゃんが、よおしって小さくいって、太い筆に絵の具をたっぷりつけた
青やみどりや白、きいろ、パレットの上の色がまざって、だんだんに絵があらわれてくる
海だ